<前回までのあらすじ>
反社会的勢力団体に所属する隣人Kさんに飲みに誘われた学生ニコライと友人のS。さて、どうなることやら、、、
(続き)
「安い店に行こう。よく行く店があるんだよ」そう言うKさんについて都電に乗って辿り着いたのは、大塚駅前のおでん屋台だった。ここで、四国愛媛出身の私は、「関東のおでん」の洗礼をうけた。
Kさんが店のおじさんに「スジおくれ」と言っているのを聞いて、「僕も!」と頼んでお皿に乗って出てきたのは、串に刺さった牛スジ肉ではなく、灰色の練り物だった。関東でスジと言えばこれだというのをこの時知った。
そしてちくわぶ!(ちくわぶを初めて食べたのはこのおでん屋台では無かった気もするが)なんだあのふにゃムチした食感は!初めて食べた時から20年以上経つけれど未だに馴染めないぞ!「ちくわぶ無いとおでん始まらない」と言ってた知り合いの関東人もいたけれども。
さて、不思議な3人の飲み会はそこそこ盛り上がり、おでんと日本酒で酔っ払い調子に乗ったKさんがとんでもないことを言い出した。
「よし、これから組の事務所に行くぞ!」
一気に酔いが覚めた。
(続く)
(続き)
勘定を済ませると、Kさんはタクシーを捕まえた。我々はタクシーに乗り込み、事務所があるという池袋へと向かった。
「組って、やっぱ、あの怖い人達が集まってる"組"だよな」「もし断りきれず、まかり間違って組員になるようなことがあれば、親にどう説明しようか」なんてことを車中で考えているうちに、池袋が近づいてきた。
いつの間にかKさんはウトウトし始めており、タクシーの運転手さんの「お客さん、どこで降りますか?」の声で目を覚ました。Kさんは「ああ、そこらへんで」と言い、我々は池袋東口のビル街でタクシーを降りた。
タクシーを降りたら、Kさんの様子がなんだか怪しい。「あれっ!?事務所どこだったっけ?」酔っているせいか、事務所の場所が分からないらしい。我々はなかなか事務所にたどり着けず、ついにはKさんがどこぞのビルの閉まっているシャッターを開けようとし始めた。
やるなら今しかねぇ、とばかりに「こんなに酔っ払って行ったら事務所の人も迷惑ですよ」「また今度にしましょう(絶対やだけど)」などと適当なことを言いながら、友人Sと私は両サイドからKさんを挟んで、タクシーを捕まえ、Kさんと一緒にタクシーの車内になだれ込み、西巣鴨のアパートへ帰還することに成功した。
あとから考えれば、あのKさんのあまりの挙動不審ぶり、、、Kさんは本当に下っ端のチンピラだったのかもしれない。調子よく「事務所へ行くぞ」と言ってはみたものの、酔っ払って事務所へ行くのが直前になって怖くなったのかもしれない。あるいは、あの名刺さえもひょっとしたら偽物だったのではないかと疑わしくなってくる。コスプレ警官ならぬコスプレヤクザ?まあ、そんなのは無いか。
それと、この異常な飲み会にたまたま友人Sがいて、自分1人ではなかったのが本当に運が良かったと思う。幼少の頃からコンクリを殴って拳を鍛えていたという伝説を持つ武闘派のS(でも心優しき男)の存在が本当に心強かった。後でこのKさんとの一件を振り返ったときにSはこう言った。「全然心配してなかったよ。あんなオッチャン、俺とお前と2人いればなんとでもなるやろ。」いや、あなた1人で十分です。
さて、その飲み会の後、しばらくしてKさんはアパートを出て行った。
学生ニコライに、平穏無事な日常が戻ったかに見えた。
そう、アパートにあの「彼女」が引っ越して来るまでは!
(完。「彼女」の話はまたいつか。)
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