これは、投稿はしていない"忘れ得ぬ人々"のお話です。
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大学3・4・5年生の3年間、西巣鴨のアパートに住んでいた。大学2年生までは寮に住んでいたので、大学3年生から"真の"一人暮らしを始めたことになる。
池袋の不動産屋で「とにかく安いところをお願いします」と言って、案内してもらったのがトイレ共同風呂無しの木造二階建てアパートだった。そのアパートには四畳半と六畳の部屋があり、どちらにも入居可能だったのでどっちにするか聞かれた。「とにかく安いところ」と言っていた割には見栄を張り、二階の六畳の部屋にした。それでも家賃は月二万八千円と安かった。
しかしながら、つまりはそのアパートには自分みたいな「とにかく安いところ」を志向しあまり環境を問わない、ちょっとクセのある住民が集まっていたような気がする。
あまり大学にも通ってなかった自分が日中ゴロゴロしていると、階下の部屋からは、謎の念仏(密教のマントラみたいなやつ。聞いたことはないけど)が聞こえてきたり、カップルが時代劇の再放送を見てあーでもないこーでもないとツッコミを入れる声が聞こえてきたり、あと明治通りがまあまあ近くだったので車の通行音など、結構騒々しいアパートだった。
そのアパートの自分の向かいの部屋に、"忘れ得ぬ人々"であるヤクザのKさんも住んでいたのであった。(続く)
続けます。
Kさんは、小太りイガグリ頭で年は30代くらいだったろうか。アパートがトイレ共同だったので、たまに廊下で会って顔だけは知っている感じだった。
その日は友人のSが自分の部屋に遊びに来ており、いつも通り馬鹿話で盛り上がっていた。するとドアがノックされ、開けるとKさんがいた。「やべ、うるさかったかな」と思っているとKさんが「楽しそうだな。これから一緒に飲みに行かねぇか?」と思いもしなかったことを言ってきた。Sとはもともと酒を飲む予定だったので、Sに確認すると別に構わないよとのこと。急遽Kさんと3人で飲みに行くことになった。
とりあえずSと、Kさんの部屋に入った。テレビしかない殺風景な部屋だった。そこでKさんから「俺はこういうもんなんだけど」と名刺をもらった。名刺には「〇〇会 K」とそこそこ有名な反社会的勢力の団体の名前が書いてあり、オイオイと思いつつも、今さら「やっぱり飲みには行けません」と言うことはできなかった。
(続く)
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